アナログプレーヤは調整次第でどんどん音が良くなります。逆に言えば調整を怠ると性能を発揮できないばかりか、レコード盤を痛めてしまうことにもなりかねません。 調整箇所が非常に多いため、忘れてしまわないように内容を整理しておこうと思います。TD521 と 3012R に特化して記述していますが、他のプレーヤにも応用できると思いますので調整の参考になれば幸いです。
調整手順はおおよそ以下のようになります。
- プレーヤー本体の水平調整
- ターンテーブルの水平調整
- トーンアームのゼロバランス調整
- ラテラルバランス調整
- 針圧調整
- オーバーハング調整
- トーンアームの水平調整
- カートリッジの傾き調整
- アンチスケート調整
プレーヤ本体が水平に保たれていなければ、その後の調整が全く意味のないものになります。ここは時間をかけて水平に調整する必要があります。
1.TD521(TD520) の足は 10mm 程度の厚さの丸いフェルトが4隅に貼ってあるだけです。 高さを調整するためには足の下に何か挟み込むしかありません。 また、4点支持の場合がたつきが発生する可能性があるため、写真のようなインシュレータを使用して3点支持にしました。 このインシュレータの下にブチルゴムテープなどを挟み込んで調整します。 国産の多くのプレーヤは足がフローティングサスペンション構造になっていて、その足を回転させることで高さ調整ができるようになっているものが多かったような気がします。 本体とターンテーブルが同時に水平調整できて便利かつ調整もやりやすいものです。
2.私の場合、大理石の板をオーディオボード代わりに使用しており、この板そのものを水平に調整してその上にプレーヤーを設置しました。
3.本体の上に水平器を乗せ、数か所で水平になっていることを確認します。
TD521(TD520) は、サブフレームを吊り下げ式フローティング・サスペンションで支える構造になっており、サブフレームの傾きを調整してターンテーブルを水平にする必要があります。
1.赤丸で囲んだ3か所のネジを回して調整します。
プラッターやマット、ディスクスタビライザー(レコード押さえ)などの重量でサブフレームが傾くため、これらを全て置いた状態で水平になるように調整する必要があります。 厳密に言えばレコードの重量も考慮する必要があります。
2.一番左側の調整ネジはターンテーブルの下に隠れてしまうため調整が困難です。
サブフレームと本体の高さが一致するよう、おおよその位置で高さ調整します。 何も載せていない状態では写真のようにサブフレームが本体より浮き上がっていますが、ここでは目分量で調整するしかありません。
3.プラッターなどを載せた後、残り2か所のネジを回して水平に調整します。
水平に調整した後、サブフレームの高さが本体の高さと一致していない場合、2からやり直します。かなり面倒な作業です。この調整が一番時間がかかるかもしれません。 サブフレームをもう少し左側に長くして調整ネジがプラッターの外側に来るようにしてあれば、かなり調整が楽になるのになぁ・・・
4.ターンテーブルの上に水平器を置いて数か所で水平が保たれていることを確認します。
因みに私はディスクスタビライザーを使用しないため、これを置かずに調整しています。
5.サブフレームを支えるサスペンション構造と正しい調整位置です。
イメージ図ですので、実際の構造とは異なっているかもしれません。
J字型のトーンアームはアームが曲がっているためカートリッジ側から見て反時計回りに回転しようとする力が働きます。 これをバランスさせるための調整です。 必ずトーンアームがゼロバランスしている状態で、この調整を行います。 しかし 3012R は支点がナイフエッジになっていて線で支えるタイプのため、構造的にトーンアームは軸周りに回転できません。 従って大きく狂っていない限り、あまり厳密に調整する必要はないかもしれません。
1.J字型のトーンアームはアームの自重やカートリッジなどの重量が作用して軸周りに回転しようとする力が働きます。
2.赤丸で囲んだ調整ネジを回すと、ウェイト全体が左右に動くようになっていて、重心をずらしてバランスを取ることができます。 針圧調整とラテラルバランス調整を兼ねているようです。
3.ラテラルバランスが狂っているとトーンアームがゼロバランスしている状態でプレーヤを傾けた時にアームが写真の矢印方向に動きます。
せっかく水平に調整したプレーヤ本体ですが、本体の後ろ側を持ち上げ少し傾けた状態にしてトーンアームが動かなくなるように調整します。 ただし、完全にバランスさせる必要はありません。(軽重量のカートリッジでは調整しきれないと思います) そもそも本体が水平になっていればトーンアームは動かないため大きく狂っていなければ問題ないと思います。
針圧は専用のデジタル針圧計を使用して調整します。
カートリッジには結構強力な磁石が使用されているため、専用の秤以外では正確に測定できない場合があります。
オーバーハングが狂っているとレコードの音溝を針先が正確にトレースできなくなってしまい音が歪んだりします。この調整はとても大切なため慎重かつ正確に調整します。
オーバーハング調整用のアライメントプロトラクターという調整用紙を Studio Kuro さんという方が作成されていますので、これを利用させてもらおうと思います。
1.3012R 用の調整用紙を印刷して使用します。
PDF ファイルを印刷する場合、必ず「実際のサイズ」で印刷します。「用紙に合わせる」などで印刷すると縮尺が狂ってしまい、正しく調整できません。 3012R のオーバーハングは 13.2mm ですが、この 13.2mm のラインがわかりやすいよう赤線にしたデータはここからダウンロードできます。
2.オーバーハングの量は、赤丸で囲んだ位置のネジを緩めてトーンアーム全体を動かすことで調整できます。 ネジは反対側にもあります。両方のネジを緩めて動かします。
3.針先がターンテーブルの中心から 13.2mm オフセットした円周上を動くように調整すればレコードの音溝と針先の角度は、ほぼ平行になるはずです。 ターンテーブルの中心軸付近で調整した方がやりやすいと思います。
4.国産のプレーヤはトーンアームの支点が動かせないものが殆どで、長穴になっているシェルの取り付け穴を利用してカートリッジの取り付け位置を変えることでオーバーハング量を調整します。
カートリッジがレコードに対して垂直になるように取り付けられていない場合、レコードの音溝を針先が正確にトレースできなくなってしまい、音が歪んだりします。
レコードの溝をトレースする摩擦で針先にはレコードの内側へ引っ張られる力が働いています。 針圧が重い場合はその影響も大きく、場合によっては針飛びを起こしたり、方チャンネルの音が歪んだりするかもしれません。 インサイドフォースキャンセラーを使用してトーンアームをレコードの外側へ押し戻すような力で打ち消す必要があります。
1.3012R は重りをトーンアームの後方に伸びたアームに引っかけて調整します。
アームは 1 目盛り 0.25g になっているようです。針圧に合わせて引っかける位置を変えて調整します。(針圧が重いほど後方にずらします)
2.重りを吊るしている糸と引っかけアームの角度は、トーンアームがレコードの最外周にあるときに 90 度になるようにします。 インサイドフォースキャンセラーは少なからずトーンアームの動きを妨げるため必要ないという方もおられるようです。 針飛びや音の偏り、歪などが感じられない場合は、使用しなくても良いかもしれません。 写真では針圧 1g に対して規定値になっていますが、実際の使用時には規定よりも少なめにしています。
きちんと調整されたプレーヤで再生されるレコードの音はびっくりするくらい良い音が出てきます。後から出てきた MD や DAT などのデジタルメディアがとっくになくなってしまった現在でもアナログプレーヤは未だ新製品が発売されている理由が良くわかります。昔の録音の方が現代のコンピュータによる打ち込みやコンプレッサーかけまくりでダイナミックレンジが狭い録音よりも状態が良いというのもありますが、とても耳に心地良い音がします。また、アナログプレーヤは調整による音の変化が大きく使いこなし甲斐もあり、オーデイオ機器の中で最も趣味性が高いものではないでしょうか?